【完】風に恋をする。
その温もりに、抑えた涙が溢れ出す。
ぎゅっと目をつぶっても、止まらない涙。
そっと目を開ければ、優しく笑っている風馬の姿。
『ありがとう』
何度もそう言いたいよ。
彼だけじゃない。
三人だけでもなくて、
みんなに…みんなに、言いたい。
その前に…あたしは、話すよ。
”あたし”のこと。
「…あたしね、事故に遭って体が弱くなっちゃったの。
身内とかあんま知らないし、誰も側にいなかった。
そんな生活でね、寂しいとか苦しいとか、そんなキモチよりも…
怖かった」
一人が怖かった。
狭い部屋に、あたし一人で。
それが、心も同じで。
そんなんだから、笑えなくて。