幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
――マール修道院。王都から五十リーグほど離れた、海の上にある所だよ


「修道院?」


――創始者は古王家最後の王女、ラドリーン姫だ


ラドリーン姫! 

それなら、失われた召喚呪文が残っていても不思議じゃない。

古い伝説の登場人物であるラドリーン姫は、今の王家の前の王家、ハルド家の最後の一人だった。

母君は異界から来た魔導士で、姫自身も強い魔法の使い手だったという。


「ああ、でも修道院の中だなんて、どうやって捜せばいいの?」


――修道女になれば簡単だぜ


「あたしに修道女になれって言うの?」


――本当になれって言ってないだろ? 見習い修道女でいいんだよ


なるほど


本当の修道女になる前に、見習い期間がある。

女性の身内がいない貴族の娘が、結婚が決まるまで、見習いとして修道院に預けられるのも珍しくない。

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