飛べない黒猫
実際、蓮自身も真央と一緒で、学校祭は初めてみたいなものだった。
学生時代から、人が集まる行事は避けていた。


「そぉ?普通だよ…あ、真央ちゃんヨーヨーすくいやろうよ!」


美香がぐいっと2人を引っ張る。

【1チャレンジ100円】と書いた張り紙があった。
水を張った子供用ビニールプールの中にカラフルな色のヨーヨーが浮かべてある。

蓮は「2つ下さい。」と言って、ポケットから小銭を取り出した。

制服の上に法被(はっぴ)を着た生徒達が蓮を見て「キャァ」「カッコイイ」とささやいているのが聞こえた。


「真央ちゃん勝負しよう、あたし上手なんだ。」


美香がコヨリの先に釣り針がついた竿を受け取りビニールプールの前にしゃがむ。


「…うん。」


真央も美香の隣にしゃがみ竿を受け取った。
2人はヨーヨー釣りに集中し始めた。

どうなることかと思ったが、美香の強引なリードのおかげで、真央の気もうまい具合に逸れたようだった。



「ここの高校、洋裁関係の単位もあるから。
メイド服とか、法被とか、生徒の手作りだけど完成度高いんですよね。
コスプレ見にくる一般客も多いんですよ。」


直哉が蓮に話しかけた。


「へぇ…自分達で作っているのか、すごいね。」


「ほら、あそこ…
カメラ持った男性…あっ、あっちにも…
女子高生のコスプレですからね、そのテのオタクも多い。
僕もオタク系ですがね…
生身の人間は興味ありません。
フィギア…模型ですね、そっち系なんです。」


「…そう。」


俺は女子高生のコスプレも、模型も…あまり興味は無いけどね…

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