飛べない黒猫
3週間ぶりに訪れた洋館の居間の窓際には、天井まであるツリーが置かれていた。
それは、立派なエゾマツの若木で、シルバーのモールと色とりどりに輝く豆電球が巻き付けられていた。
キッチンからは、肉の焼けるいい匂い。
こんなに盛大にクリスマスを祝うことなんてなかった蓮は、戸惑いながらも、なんだか華やいだ気持ちになるのが不思議だった。
洋子は真っ白な割烹着を着た和野に、ケーキとシャンパンを渡し、何か話しかけて笑いあっている。
2人は親子くらいの年の差。
蓮は幼い頃に亡くなった祖母を思い出す。
母親から「よく、おんぶしてもらってたのよ」と、聞かされていた。
蓮も、祖母の背中の記憶は微かにあった。
背負われると、いつもよりずっと視線が高く、アスファルトの道路までの距離が遠く感じて、少し怖かった事や、いつもと違う見晴らしのいい景色が新鮮に感じて楽しかった事を覚えている。
和野とは一度会っただけなのに、何故かぐっと親しく感じるのは、祖母の面影を重ねているからなのかもしれない。
「和野さんの手料理が食べたくて、また来てしまいました。」
蓮の言葉に、和野の顔がほころぶ。
「嬉しいわぁ、今夜のチキンは昨日から仕込んだのよ。
野菜とハーブに漬け込んであるから、お肉は柔らかくってジューシィー。
そして皮がパリパリになるように、じっくり、じっくり焼いているの。」
「楽しみです。」
蓮からジャケットを受け取り、顔を上げた和野の動作が一瞬止まった。
「…えっ!?」
驚いた和野が声をあげ、蓮の後方を見る。
「真央さん!」
つられて蓮も振り返った。
驚いた和野の声に真央もまた驚いて、一歩あとずさりしてしまうが、すぐに、緊張で引きつった顔を無理矢理笑顔に変えていた。
「あら、あら、なんて可愛らしいんでしょ!
とっても良くお似合いですよ。
お客様をお出迎えするのに降りて来たのですね。」
和野は真央に駆け寄ると「頑張りましたね…」と、ささやいた。
真央だけに聞こえるよう、小さな声で。
それは、立派なエゾマツの若木で、シルバーのモールと色とりどりに輝く豆電球が巻き付けられていた。
キッチンからは、肉の焼けるいい匂い。
こんなに盛大にクリスマスを祝うことなんてなかった蓮は、戸惑いながらも、なんだか華やいだ気持ちになるのが不思議だった。
洋子は真っ白な割烹着を着た和野に、ケーキとシャンパンを渡し、何か話しかけて笑いあっている。
2人は親子くらいの年の差。
蓮は幼い頃に亡くなった祖母を思い出す。
母親から「よく、おんぶしてもらってたのよ」と、聞かされていた。
蓮も、祖母の背中の記憶は微かにあった。
背負われると、いつもよりずっと視線が高く、アスファルトの道路までの距離が遠く感じて、少し怖かった事や、いつもと違う見晴らしのいい景色が新鮮に感じて楽しかった事を覚えている。
和野とは一度会っただけなのに、何故かぐっと親しく感じるのは、祖母の面影を重ねているからなのかもしれない。
「和野さんの手料理が食べたくて、また来てしまいました。」
蓮の言葉に、和野の顔がほころぶ。
「嬉しいわぁ、今夜のチキンは昨日から仕込んだのよ。
野菜とハーブに漬け込んであるから、お肉は柔らかくってジューシィー。
そして皮がパリパリになるように、じっくり、じっくり焼いているの。」
「楽しみです。」
蓮からジャケットを受け取り、顔を上げた和野の動作が一瞬止まった。
「…えっ!?」
驚いた和野が声をあげ、蓮の後方を見る。
「真央さん!」
つられて蓮も振り返った。
驚いた和野の声に真央もまた驚いて、一歩あとずさりしてしまうが、すぐに、緊張で引きつった顔を無理矢理笑顔に変えていた。
「あら、あら、なんて可愛らしいんでしょ!
とっても良くお似合いですよ。
お客様をお出迎えするのに降りて来たのですね。」
和野は真央に駆け寄ると「頑張りましたね…」と、ささやいた。
真央だけに聞こえるよう、小さな声で。