飛べない黒猫
「それと…ちょっとかして。」


蓮は設定画面を開いて、自分のメールアドレスを登録した。


「俺のアドレス、入れておいたから。
感想など…なんでもいいから書き込んで教えて。
貴重なギャルの生意見として、今後の参考にさせてもらうよ。」


少し戸惑った顔。


「メールの使い方わかる?」


不安げにうなずく。


「はい、決まり!
返事は書くから、ちゃんとメール送ってね。」






ストレスのはけ口は、対話だけとは限らない。
本来は、相手の反応を感じながら話すのが好ましいが、今の真央はそれができない。

なら、書けばいいんだ。
文章で。


日記という手もあるが、それでは一方通行で効果も半減してしまう。

今、真央のストレスを発散させるのに必要なのは、彼女の気持ちに耳を傾けて、決して否定せず、認めてあげることかもしれない。

それには、相手が必要なんだ。
交換日記だ、文章でのキャッチボール。

これをメールでやればいい。


送ってくるかどうかは分からない。
だが、環境だけは用意しておこう。
そして、メールがきたら、そのやり取りの中で彼女の気持ちを引き出すような問いかけをするのだ。


ひとつ屋根の下に暮らしていて、メールっていうのも味気ないが、とっかかりになればヨシだ。




パソコンの待機画面に魚の画像を設定し、数分間使用しなければ画面が消えるようにした。
使い方を説明して、蓮はパソコンを終了させた。

…少し、冒険。



「これからコピー用紙を買いに行くんだけど…一緒に行こうよ。
真央ちゃんは車に乗ってればいいから、怖くないよ。
天気いいし…ドライブだ。」
< 46 / 203 >

この作品をシェア

pagetop