飛べない黒猫
真央が待っていると言うのだ。
思い通りにさせよう。


「それじゃ、買ってくるから。
大丈夫だよ、すぐに戻る。
…クロオ、頼むぞ。」


駐車場から店内入口まで、猛ダッシュで駆け抜けた。
置いてある場所は、どこの店も似たり寄ったりだ。

店内の手前が、ティッシュや洗剤関係だ。

くそっ!
洗剤を買うと言っときゃ良かった…

見当つけて奥に入り、文具コーナーを見つけた。
駆け込むと、セール品のコピー用紙が手前に積まれている。
2冊つかみ取り、そのままレジに直行した。


平日の午前中だ。
レジはがら空き、ラッキーだった。


「袋いりません、レシートいりません」


金額丁度をコイントレイに並べ、蓮は駐車場まで一直線に走った。



体力落ちてるな…俺。
あぁ、息切れてるし。


車の窓、助手席の影が見える。
異常は無さそうだ。

走りながら、キーの自動ロックボタンを押す。

コトッ…



「おまたせ、買ってきた!」


ゼィゼィと息を切らせて、引きつった笑顔でドアを開ける。

片腕にクロオ、もう片方の手でペンダントを握りしめた真央が、緊張した顔で俺を見た。


「やった!平気だった!」


緊張がほどけて笑顔になった真央が力強くうなずいた。
蓮は真央の頭をワシャワシャと撫でる。


「ご褒美だ、何がいい?
何処行きたい?何食べたい?」


上気した真央の顔が輝いた。

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