飛べない黒猫
…アメリカ兵?


その男は獲物を仕留めハンターのように勝ち誇った顔で蓮を見下した。

蓮は車内を振り返る。

某然として動かない2人がいた。

青田は眉間にシワを寄せ厳しい表情で視線をそらし、洋子は真っ青になってうつむいている。


「…なに言ってんだ?」


蓮は、再び男を睨みつける。


「やはり、君は知らないみたいですね…」


ささやくように蓮の耳元でつぶやき、すぅっと息を吸い、今度は車の中の青田に聞こえるように声を張り上げた。


「ここじゃ、なんです。
お邪魔させてもらっても、構わないでしょうかね?」


そして、もう一人の男に目配せして合図した。

車の前に立ちはだかっていた背の低い男は車から離れ、道をあける。
青田は何も言わずに、車をUターンさせて門の中へと戻った。

背の低い男は、門の前で立ち止まりこっちを振り返る。
蓮が胸ぐらを掴んで離さない男を待っているようだった。


「すみませんねぇ、では、失礼しますよ。」


男は蓮の腕を振り払い、スタスタと門の中に入って行った。




どういう事だ…


蓮の鼓動が激しく波打つ。


事件って言っていた。

26年前といったら、俺が生まれる1年前…
母親が俺を妊娠した頃だ。


洋子の動揺した表情からして、良くない話しであろう事は歴然だった。

青田も知っている事なのだ。
男が何を言いたいのか察していた。

俺が関係している…

蓮は嫌な予感に襲われていた。

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