聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~
「……法術も、原理が分からないから便利だとは思うけど少しだけ君が悪いし」


 今は塞がったアルジスの腹部の傷も、法術で直したとはいえあまり使いたいものではない。自分の他の生徒たちは傷の痛みを癒す不可思議な力を過信し、湯水のように使っているが、今の研究でその力の原理が判明したときの最悪の予想をした試しがないからこその行動だとサリアは思う。



「………かつて、魔法使いは旅をしながら、出会った魔法使いに勝負を挑んでいたという」


「え……」


「今は魔法はこういった学院で『正しい使い方』とやらを教えているが、昔はそんな道理はなかったからな。自分より強いものに跪き、弱いものを虐げる。………それが普通だった時代は、確かにある」


 ある意味黒歴史とも言うからやはり秘された事実ではあるが、と前置きして、アルジスはふっと息をついた。


「………しかしそんな時代に生きる魔法使いたちにとって、脅威ともいえる存在は、確かにあった」


「脅威の……存在?」


 首を傾げたサリアにアルジスはふわりと笑いかけ、それからやっと聞き取れる程度の、小さな声で言葉を零す。


「………プロヴァス。その存在は、そう呼ばれていた」


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