吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
「すいません」
髭男は頭を下げた。
見た目は髭男の方が年上に見えるのに、目に見えない上下関係がはっきりとイオタにも認識できた。
「吸血鬼とはいえ子供と女相手に手間取っている原因は何かな?」
「はい、実は……」
低い声で問われ、髭男は一連の出来事を手短に説明した。
そして、階段で隊員がバタバタ倒れて死んだことを報告している途中で「それは三匹のうちのこいつがやった可能性があるわけか……」と眉間に皺を寄せた。続けて「それでこのザマなわけだな」と中折れ帽の男が嫌味を言ったが、髭男は不満そうな表情を微塵も見せなかった。