吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
イオタは慌てて座席に身を沈めて姿を隠し、座席と座席の隙間から様子を窺う。
「面白いこと言いますね。吸血鬼は三十歳くらいで成長がとまるのに」
ガンマ少佐は斜め後ろにいた隊員から日本刀を受け取る代わりに中折れ帽を渡した。
「とどめを刺してくれるのか?」
フロックコートを着た男は強がった尋ね方をして立ち上がろうとするが、ガクッと両膝が折れ、まるで処刑してくださいみたいな体勢になる。
「首を斬り落とさないと安心できないな」
多少喋り方に若さを感じるガンマ少佐は鞘から日本刀を抜き、片手でひと振りをして簡単なデモンストレーションを行い、観客席の階段を飛ぶように駆け下りる。