吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
フロックコートを着た男は覚悟を決めたのか静かに両目を閉じたが、日本刀がガンマ少佐の腰の位置からスイングに入ろうとしたとき、力強く両目を開け、天使が微笑む天井のフラスコ画に向かって「おれの血はこの劇場と共にある!」と叫ぶ。
ガンマ少佐は無表情のまま日本刀を水平に振り抜き、フロックコートを着た男の胴体から頭部が切り離され、階段で弾みながら血を撒き散らした。
血液成分から放たれるメチルメルカプタン、アンモニア、硫化水素、ホルモン、などの配分がそれぞれ違うのか血のニオイは複雑で、飛沫ひとつひとつに個性が感じられ、それだけたくさんの人間の血を吸っていたということになる。
試験管に入っていた血液と臭いがほぼ一致。
フロックコートを着た男はアルファという吸血鬼に間違いなかった。