xxxFORTUNE
「文句あんのかよ?」
「大ありよ」
また、言い合いになりそうな雰囲気。
「おまえ、別に“すず”が本名じゃねぇだろ」
「それは………」
言われてみればそうだ。
あたしの名前は楼那すずじゃない。
人間界に慣れすぎて、忘れそうになっていた。
「わかったわ、じゃあ黒猫さんの名前は“鈴”にしましょう」
あたしの本当の名前は、ローナ・ベル。
ベルは代々の引き継ぎだから、個人の名前はローナ。
エシャルに戻っても、大半が様付けだから名前で呼ばれることって少ないのよね。
「本名、忘れるところだったわ」
呟きに対して、愛琉さんの不思議そうな顔。
「エシャルでは、ほとんど名前で呼ばれないの。
人間界でもすずやヒメでしょ?
家族以外から本名で、しかも呼び捨てしてもらえたのっていつかしら」
付け加えて説明すると、愛琉さんは鈴の頭を撫でてあげていた。
「覚えてねぇの?」
「えぇ、本当はローナって呼ばれるのが一番好きなんだけど。
立場上、呼び捨てって難しいみたい」
鈴が立ち上がると、あたしの膝から愛琉さんの膝へ移動する。
なんだ、特別嫌っているわけでもなかったのね。