ONLOOKER Ⅲ
いつものように、西校舎の昇降口から北校舎へ向かい、いつものように西側の階段を上り、いつものように三階の一番大きくて豪華な扉の前に立ち、いつものようにその真鍮のドアノブに手をかける。
いつものようにそこには、紅にちょっかいを出しては小言を言われる准乃介や、コーヒーで一服してから昼寝をしに休憩室へ消える夏生や、ギターを抱えて五線譜に音符を並べる恋宵が、いるはずだった。
いや、確かにいることに変わりはない。
ただ、
「すいません遅れま、」
「あー西林寺おっそいやん!」
ただ、なにか無闇に騒がしくて、室内の人口密度を一気に引き上げる人たちまでもが、いたというだけで。
「……なんでいるんですか」
「話あるって言ったじゃん、忘れてたのー?」
「つーかばっくれる気ぃやったやろ」
光景と一緒にさっき感じた頭痛まで蘇ってきた気がして、直姫は周りを見た。
准乃介は彼らの存在を完全に無視して紅ばかり見ているし、恋宵がギターを抱えているのも、夏生の姿が見えないのも変わらなかった。
さすがと言えなくもないのだが、いつもよりもやけにマイペース加減に拍車をかけているだけのような気がしているのは、直姫だけなのだろうか。
落ち着かない様子の紅と真琴に小さな同情を覚えながら、直姫は口を開く。
「ここ、生徒会以外立ち入り禁止なんですが……」
「ごめん直姫……俺じゃこの人らには敵わない」
「は?」
普段は疲れさせる側であるはずの聖が、すでに疲れきった表情で言った。
前提のわからない物言いに、眉を寄せる。
そんな彼女に、ソファーに腰掛けた千佐都の前にだけ紅茶を置いた准乃介が、補足的に口を挟んだ。
しかし、なんとなく、違和感がある。