君桜



スッと学さんが離れる。


「…?」


もう少しだけ、抱きしめていてほしかったなァ…。


そんなこと、口が裂けても言えないけど。


学さんを見上げると、街であたしたちに絡んできた女の人を見ていたような表情、恐ろしい顔で看護師を睨んでいた。


そうだ。


あの時あたしは、‘‘相堂組’’って感じたんだ。


「テメェ。葉奈に何言った」


学さん!


「学さん、いい!何も言われてないから!!」


学さんの低い声。


威圧感のある声。


何も言えなくなるような声。


お願いだから去ってよ!


あたしたちの前から、見えなくなって!!


看護師に目で訴えるけど、動こうとしない看護師。


だけど、その目は明らかに…、学さんに怯えている様子。


「おい、なんとか言えや!」


「学さん!!」


学さんの腕をぎゅっと抱きしめ、必死で止める。


「あたしは大丈夫だから!お願いだからやめてぇ!!」


あたしの声が反響する。


「……お前が大丈夫でも、俺が大丈夫じゃねぇんだよ!!」


「…え?」


どういう、こと…?




< 115 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop