君桜
嫌われたら、って
捨てられたら、って
そればっかりが頭の中グルグル回って、
やっぱり何処に行っても嫌われてしまうんだと思ったら哀しくて。
「…葉奈?」
優しい声で名前を呼ばれて恐る恐る顔を上げると困ったように眉を下げてあたしを見つめる学さんがいた。
「…ごめんなさい」
無意識のうちにするっと出てきた言葉。
今はとりあえず謝るしかない、よね。
学さんはあたしが勝手なことをしたことに怒ってるのかと思ってた――けど、
「……また傷作りやがって……」
そう言ってあたしの頬にそっと手を添えた。
そう、あたしがアイツに殴られた、場所。
「痛い?」
心配そうに聞いてくる。
痛いけど、でも。
「…痛く、ない」
首を横に振った。
だって痛いとか言ったら学さん病院行こうとか言いだしそうだもん。
「家に帰ったらすぐに湿布はってやっから。我慢しな?」
「……ん」
それだけ言うと学さんはハンドルを握り直した。