君桜
「ハハ、スゲーだろ?ここからの夜景はダチにも好評」
にっと笑ってあたしの濡れた頭をポンっと叩く。
「きちんと拭けよ?風邪ひくぞ?」
「ひゃっ、ちょっと学さん!」
バスタオルでワシャワシャとあたしの髪の毛をふく。
おかげでぐちゃぐちゃだ。
「お前、ちっちゃくねェ?」
笑顔でサラッと失礼なこと言うなァ。
それでも悪い気がしないのは何でだろ。
見ず知らずのあたしを、
今日初めて会ったあたしに、
普通、ここまでしてくれるのだろうか。
あの家に帰っても、
あの家に戻っても、
あたしにきっと‘‘未来’’は、ない。