水恋

どうやら名前を相手に伝えるということは、気を許している、という行為につながるそうだ。

「へぇ、李津て言うんだぁ。ね、李津君」とその子は私にすり寄る。

同時に私の全身に鳥肌が立つ。

そして、私は少し女子から離れる。


「あの…俺、これから用事があるんだけど…」

でも聞く耳を持たない女子達。

ていうか、こいつら誰よ。私、名前言ったけど。

とは言っても、ここで名前を聞いたりするようなチャラ男にはなりたくない。

その時、ぐいっ、と私は誰かによって引っ張られた。

「えっ」

私を引っ張った主を見る。

なんとなく予想はしていたけど、樋口先輩だ。
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