前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
幾度となく大あくびを零しながら当時のことを思い返していると、「空さん」母さんから声を掛けられる。
食事中だったことを思い出した俺はマナー違反をしていることに気付き、ごめんごめんと素直に謝った。
こっちをチラ見してくる晩酌中の父さんにもごめんなさいをして俺は、持っていた箸で鯖を半分に割る。
ん? やけに切れにくいな。
どうして鯖が綺麗に切れないんだ?
「空さん、お箸が逆ですよ」
母さんにツッコまれて、俺は自分の持っている箸に目を向けた。
あ、本当だ。
細い方が真上を向いてらぁ。
イソイソとお箸を持ち直して俺は誤魔化し笑い。
「まだ寝ぼけているみたい」
割った鯖を白飯と一緒に食べようと俺は持っているお椀の上にのせ…ボチャ。
ボチャ?
視線を落とすと、アウチ、鯖が味噌汁に浮いたり沈んだり。
何事もなかったかのように味噌汁を啜ってこの痛い空気を散らそうとするんだけど、そうは問屋がおろさなかった。
「空。最近無理していないか?」
父さんがストレートに物申してきたんだ。
そんなことないと俺はかぶりを横に振るけど、血色が悪いと指摘されてしまう。
……あまり顔色については触れられたくない。
本人も血色のせいで老け顔になっていないかどうか、とつても気にしているんだから。
「ちょっと夜更かししているせいかな」
今日は早く寝るつもりだから、俺の言葉に母さんが過剰反応を示した。
やっぱり苛められているんじゃっ、と問い詰めてくる。
「そ。そんなことないって。御堂家の皆さん、とって良い人だよ。御堂先輩とも上手くいっているし」
ちょっと度が過ぎるスキンシップが玉に瑕だけど。
嘘、すっげぇ度の過ぎるスキンシップのせいで俺は恥を掻いている。
「源二さんも一子さんも自分の息子のように接してくれるし」
毎度の事ながら婚約者が男って事実に感激してくれているという。
何故にお二人は娘の逆セクハラすら微笑ましく見守って下さるんでっしゃろう!
「女中さんの中に舞台女優を目指して上京してきた子とオトモダチになれてさ。すーっごく人生勉強になるんだよ」
テンパって失敗ばかりする子だけど良い子だ。
たまーに俺を見て赤面するのは、御堂先輩との行為を見て、見てしまっ……俺の方が居た堪れない。俺は泣きたい。
「この前なんか御堂先輩、俺のために手料理を振舞ってくれたんだよ。俺が勉強で頑張っているからってお夜食を作ってくれて」