前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
(それにスケジュール調整って。完全に日曜は公演を観に行けって言っているもんだけどな。先輩の立つ舞台は観てみたいからいいけど)
ポリポリと頭部を掻き、「あの!」俺は蘭子さんの演説に無理やり割って入ると何時に公演するのか尋ねた。
途端に蘭子さんの声が高くなり、『14時からでございます!』時間を教えてくれた。
場所は御堂先輩の通う高校であるとか。迎えは正午過ぎに寄こすと蘭子さんが言ってくる。
んじゃあ午前中はゆっくり寝られるじゃんか。
今日は早めに寝るし、7時間、8時間寝れたら、俺、完全に復活していると思う。
リフレッシュする意味を込めて婚約者の公演を観に行くのも良いな。
たまには息抜きしないと俺もノイローゼになるよ。
あ、そうだ!
俺は蘭子さんと約束を取り付ける際、是非ともさと子ちゃんを連れて行きたいと申し出る。
折角だし、劇団に入っているさと子ちゃんにも先輩の舞台を見てもらいたい。
あの子もお芝居が好きだからきっと喜んでくれると思うんだけど。
蘭子さんは快く俺の申し出を引き受けてくれた。
さと子ちゃんには自分から話しておくと伝えると、明日の日程を確認して電話を切った。
携帯を机上に戻し、俺は今に戻る。
早速両親にこのことを報告すると楽しんでおいでと微笑まれた。次いで、母さん達がちょっと気まずそうに一言。
「空さん。焦らなくても宜しいと思いますよ。まずは正式な婚約者になってからで。世継ぎ問題とかあるかもしれませんけど、まだ…、若いんですし」
「お金持ちさんは庶民と少しばかり違う思考を持っているからな。父さんも先日、とあるお金持ちさんと飲んだがそりゃもう……、空、価値観の違いに悩むと思うが自分のペースで」
一体ナニを言われているのか分からなかったけど、その渋い面持ちに蘭子さんの“早く子供を見たい“発言が聞こえたのだと察して俺は決まりを悪くする。
「孫。五年内には見られるのかな」
「裕作さんったら」
「……えーっと」
蘭子さんのせいで数秒間、豊福家に言いようのない微妙な空気が流れたのだった。
気を取り直し、舞台の約束を取り付けた俺は早めに就寝して翌日に備えた。
幾ら寝不足だったとはいえ22時から11時間ぶっ続けで睡眠を取ったら、俺もある程度は回復。顔色が優れた。
欲を言えば、半日以上寝ちまいたかったけど、あんま寝ても体に毒だ。
さてと出掛ける服だけど、遺憾なことに余所行きの服を持っていない。
金持ちの婚約者になったからって物をあれこれ買えるほど、すべての生活が贅沢になったわけじゃない。
寧ろ実家は変わらない生活を送っているから服がまーったくない。
早めに言ってくれたらバイト代で服も買えたのになぁ。