前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
これを姉と共に食べよう。
最近、真衣と会話するのが楽しくて仕方がない。まるであの頃のように戻ったような気分になる。
家庭評価も何も気にしていなかったあの頃に。
真衣だけではない、他の姉妹とだって食事中に会話することが増えた。
自分が落ち込んでいる時にさり気なく支えてくれた姉に妹。気付けば心を開いていた。
ひと段落着いたら四姉妹で外出したい。何処がいいだろう? いっそのこと外泊するのも悪くない。
思考をめぐらせて渡り廊下を歩いていると、朝日が目についた。
眩しいばかりのお日様が鈴理の顔に直接当たる。
思わず目を瞑ってしまったが、すぐに瞼を持ち上げ、鈴理は足を止めた。少しだけ昇る朝日を拝もうと思ったのだ。
「気持ちがいいな」
朝風に髪を梳かせ、鈴理は沁みるほどの朝日を見つめる。
暖かな光が全身を包み、心地良い風が心に残っている不安を払拭してくれた。
自然の癒しは偉大だと鈴理は思ってしかたがない。
「これから先、あたしはこの朝日を幾度と見るんだろうな」
その時、朝日を眺めているあたしはどういう未来を掴んでいるのだろう?
努力が実った未来を掴んでいるのか。
はたまた努力が実らず、不貞腐れた自分がそこにいるのか。
婚約者と将来を歩む仲で固定されてしまっているのか。
それとも意中に想いが届いているのか。それは今の自分では分からない。
思い描くような未来は誰だって欲しい。
自分だって例外ではない。
できることならば、あの頃に、両思いになり立てのあの頃に、アウトレットモールで告白された時間に戻りたい。
けれどそれが容易に出来れば、皆、この世の中を円満に暮らせる。
「空、何をしているのだろうな」
自分は彼と共に、あの頃のような日々を掴めるだろうか。
否、例え復縁できたとしたとしても、あの頃とは少し違った関係になるだろう。鈴理には確信があった。
別れてからというもの、彼は彼の時間を生き、自分は自分の時間を過ごして生きている。
その過ごした時間は各々違う。
彼の中で自分という存在が変化していてもおかしくないし、自分もまた変化しておかしくない。
実質、好きな気持ちはあの頃から変わらないが、価値観や優先順位は少し変わった気がする。
これが月日の力だ。
不変な気持ちでいつまでもいられないのが人間なのだ。人間は薄情であり、環境に順応する生き物だ。
彼はきっと今の自分より、婚約者を優先するだろう。自分もまた彼より、支えてくれた婚約者を優先するだろう。
お互いに好きな気持ちはそこにあっても優先する気持ちは変化している。
そう、好意だけでは生きていけない世界なのだ。