前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―


鈴理が竹之内財閥の企業データを分析しているならば、大雅は二階堂財閥の企業データを分析している現在。


自分の担当しているデータ分析が終わった今、鈴理は大雅の分も手伝う気でいた。


が、大雅に一蹴されてしまう。


曰く、これくらい自分でやらないとお前に恩を売ったようで嫌だ、らしい。

大層負けず嫌いである。


時間は限られているのだが大雅はあと半日で終わるからと条件付け、自分は別問題に手を出しておけと助言した。
 


別問題。

それは鈴理にとって気掛かり極まりない一件。

彼氏の借金問題だ。


本当は並行して調べたかったのだが、如何せん自分も企業分析で手一杯だったため、どうしても此方まで手が回らなかった。

教育係のお松に頼んで探りを入れてもらったのだが、相手が御堂財閥とあって個人情報の管理は完璧だった。

 れいって情報という情報が手に入らず、鈴理は眉根を寄せてしまう。


格好付けて婚約破談と借金問題について玲に突きつけたかったのだが(これは攻め女の自尊心からである)、現実は甘くないようである。
 

ただ分かっていることは借金の原因が豊福家自身にあるわけではなく、連帯保証人からなる借金だということだ。


第三者の借金を押し付けられたせいで地獄を見るなんて、鈴理は彼の家族に同情を抱かずにはいられなかった。

あれほど節約という努力をして生活を立たせていたというのに。
 

(結果的に御堂家に嫁ぐのだから、出世はしたのだろう。が、代償が大きすぎる)
 

溜息をつき、鈴理は持参しているUSBメモリをポケットから取り出した。

これは空のUSBメモリだ。
何も入ってはいない。


最初こそ出来上がったデータを盛ってこようと思ったのだが、それは思いとどまった。

企業成績である財務諸表のデータならばネット上でも公開されているため、学校に情報を持ち込んでも支障は出ない。

が、機密情報が含まれるとそうもいかない。
大事なデータを安易に学校には持ってこれないのだ。


大雅もそれを十二分に理解しているため、学校には財務諸表のデータしか持ってきていない。大切な情報は家に帰ってから合わせるのだろう。


昼休みにこっそり彼の教室を覗いたのだが、ううん、様子を見る限り、まだまだ時間が掛かりそうである。

手伝うと怒られるため、教室で軽食を取った後はのんびりうたた寝でもしようかと鈴理は考えていた。

徹夜が昼になって響いてきているのである。


しかし鈴理はうたた寝に失敗してしまう。


何故ならばクラスメートに呼ばれて起床しなければならなかったのだ。


顔を上げれば、


「後輩さんがそこに」


と気遣いの声音を含んだ台詞が飛んできた。


後輩。

すぐに誰か合致した鈴理は腰を上げて廊下に出る。

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