サクラドロップス

「うん、でも。ミユキはこれからも、歩いて、行かなくちゃ」

切な気な表情を消して、イツキは綺麗な笑顔を見せる。


アタシは、ドキッとして

「・・・イツキ?まだ、行かないで?」

と、言って、サクラをベンチに置いてイツキの腕を両手で掴む。

するとイツキは、静かに微笑んで

「よく想い出したネ。あの言葉」

と、言って、頭上に広がる満開の桜を指差した。


「・・・10年前」

と、アタシ。

「そう、10年前、この場所で」

と、イツキ。


アタシはイツキから片手を外し、ポケットの中のメモを指で確認する。

大丈夫・・・ある。


「今、思えば・・・意味深な台詞だよね。まるでこうなるのを、ボク自身が知っていたみたいな」

俯いて、イツキは苦笑。


アタシは、当時の記憶へと潜っていく------











 
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