メリアと怪盗伯爵
「ねえ、ほんとに大丈夫なの??」
「しっ! 誰かに気付かれたらどうするの? 大丈夫だってば! 今は調査員は皆、旦那様の自室に掛かり切りなんだから」
思い切ったテレサの態度に、メリアが心配そうに声を掛ける。
内心は誰かに見つかりはしないかとびくびくし通しなところだ。
「他の侍女の皆達はどうしたの? 見当たらないようだけれど・・・」
メリアが囁くようにテレサに訊ねた。
「みんな、旦那様の屋敷が調査の対象に決まった瞬間に、蜘蛛の子を散らしたようにどこかへ逃げちゃったわよ。残ったのは、わたしを含めて数人の使用人と、侍女だけ」
テレサが呆れたように肩を竦めた。
「わたしは、一歩その波に乗り遅れてしまったってだけ・・・」
メリアはなんと彼女に声をかければよいか分からずに、静かにテレサの手を握った。
「でも、あなたが来てくれて良かったわ。やっぱり、持つべきものは友人ね」
照れくさそうに微笑んだテレサに、メリアも微笑みを返す。
やっぱり、こうしてこの屋敷に忍び込んだのは間違いでは無かったと、メリアは心からそう思った。
「さ、あと一息ね。もうすぐ調理場に着く!」
そう言って、メリアが嬉しそうにテレサを振り返りながら、前方を指差した瞬間、テレサが石像のように固まってしまった。
「・・・・・・」
メリアが指差した方を見たまま、ピクリとも動かなくなってしまったテレサに、メリアは「テレサ?」と、声を掛けた。
彼女は、パクパクと口を動かし、青くなって前方を見つめている。
「??」
怪訝に思い、メリアはゆっくりとテレサの視線の先に首を回した。
「・・・!!!!!」