メリアと怪盗伯爵

「ねえ、ほんとに大丈夫なの??」
「しっ! 誰かに気付かれたらどうするの? 大丈夫だってば! 今は調査員は皆、旦那様の自室に掛かり切りなんだから」

 思い切ったテレサの態度に、メリアが心配そうに声を掛ける。
 内心は誰かに見つかりはしないかとびくびくし通しなところだ。

「他の侍女の皆達はどうしたの? 見当たらないようだけれど・・・」
 メリアが囁くようにテレサに訊ねた。

「みんな、旦那様の屋敷が調査の対象に決まった瞬間に、蜘蛛の子を散らしたようにどこかへ逃げちゃったわよ。残ったのは、わたしを含めて数人の使用人と、侍女だけ」
 テレサが呆れたように肩を竦めた。
「わたしは、一歩その波に乗り遅れてしまったってだけ・・・」

 メリアはなんと彼女に声をかければよいか分からずに、静かにテレサの手を握った。

「でも、あなたが来てくれて良かったわ。やっぱり、持つべきものは友人ね」
 照れくさそうに微笑んだテレサに、メリアも微笑みを返す。
 やっぱり、こうしてこの屋敷に忍び込んだのは間違いでは無かったと、メリアは心からそう思った。

「さ、あと一息ね。もうすぐ調理場に着く!」
 そう言って、メリアが嬉しそうにテレサを振り返りながら、前方を指差した瞬間、テレサが石像のように固まってしまった。

「・・・・・・」
 メリアが指差した方を見たまま、ピクリとも動かなくなってしまったテレサに、メリアは「テレサ?」と、声を掛けた。
 彼女は、パクパクと口を動かし、青くなって前方を見つめている。

「??」
 怪訝に思い、メリアはゆっくりとテレサの視線の先に首を回した。


「・・・!!!!!」
 

< 145 / 220 >

この作品をシェア

pagetop