ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
恋愛ってこんなに簡単に始まるんだっけ……。

ぼんやりとそんな八木原くんを見ていると目が合って、ニコッと微笑まれた。


「グラス空いちゃったね。次何にする?」

「……ウーロン茶を」

「え? なんで飲まないの? もうちょっと飲もうよ」

「……」


酔ってなくても八木原くんのペースに持っていかれそうなのに、これ以上飲んだら怖い。

前科アリの私だからして。


水嶋ともこんな風に飲んでそのまま流れでマンションまでついて行っちゃったんだろうか。

あの夜のことを一生懸命思い出そうとしたけれど、もやがかかったみたいにぼんやりとしか浮かんでこなかった。


だけどこうやって水嶋と並んで飲んだ気もする。

私は一体、何を話したんだろう。


「大丈夫。酔った勢いでヤッちゃったとしても、それで彼氏にしてなんて言わないから」

「……ヤッちゃうこと前提で言わないで欲しい」


少し白い目を向けると八木原くんはペロリと舌を出しておどけて見せた。
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