ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
我慢していた涙がぽろぽろとこぼれた。

それを見て水嶋が息を飲んだのが気配で分かった。


泣き顔なんか見られたくないから下を向いてギュッと唇を噛んだ。

気まずい雰囲気がホコリっぽい倉庫内を包む。


このまま立ち去ってくれないかなと思った。

ドラマみたいに走り去りたいところだけど、そんなことしたら余計に仕事が終わらない。

私の仕事はここにあるんだから。


だから水嶋が去ってくれるのが礼儀だと思う。

何を言いにきたのか、何に怒ってるのか結局分からないけど、私だって泣いて傷ついてるんだから。


もう勘弁してよって思った。


遊びだって分かったし、それなら遊ばれるつもりなんてないし。

本気で関わりたくない。


それなのに視界に入るブラウンのよく磨かれた革靴はその場から動く気配がない。

下を向いているせいで鼻水が出そうになって、かっこ悪いと思いつつもずずっと鼻をすすったときだった。


スッと視界に淡いブルーのハンカチが差し出された。
< 153 / 226 >

この作品をシェア

pagetop