ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
「……ありがと」


こんなのいらないから早く立ち去って欲しいんだけど。

そう思いつつもこれ以上鼻が出るのもかっこ悪いので、受け取って涙を押さえるふりをして鼻も押さえておいた。


グズグズと鼻をすすりながら昂ぶる感情を落ち着かせてる間、水嶋は何をするわけでもなくずっと傍に立ったまま。

いい加減、涙も引っ込んで気まずい思いをしながらも、水嶋の顔を見上げた。


当然のことながらこっちを見下ろしていた水嶋と目が合う。


怒っているような、心配しているような複雑な表情。

いつもの余裕のある意地悪そうな顔じゃなくて、水嶋の心境がそのまま顔に出てる感じだった。


……ちょっとは言い過ぎたと思っているらしい。


頭が冷えて客観的な判断を下せるようになった。

そうするとさっきの感情的になっていた自分が急に恥ずかしくなってくる。


だって水嶋に私の気持ちなんか分からないって、分かるはずがない。

私の置かれている状況も環境も水嶋は知らないのだから。


むしろ知られたくなくて必死に隠してるのに。
< 154 / 226 >

この作品をシェア

pagetop