ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
◇◇◇

1Kの小さなお城から出勤する私の服装は、持っている唯一のダークグレーのスーツ。

合わせるのは足が痛くなるから敬遠しているピンヒールのパンプス。


ふわふわのセミロングは男の人には好かれるけど、仕事のデキる女って感じはしないからお団子にまとめた。


派遣の事務社員に期待されてることなんてないかもしれないけれど、私なりに気合を入れてみる。

少しでも前に進めるように。


久しぶりの電車通勤でラッシュにもみくちゃにされて、上を向いて必死で呼吸をする。

ああ、そうだ。

働くってこんな感じだった。


誰かに足を踏まれて苦痛に顔が歪む。

光浦さんと結婚して、こういう環境から逃げ出したくて必死だったんだよね……。


結局、ここに戻ってきちゃったね。
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