恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~
車が走り出してしばらくは、
どちらも口を開かなかった。
ただオーディオから流れる音楽とナビゲーションの音声が車内に響く。
道路の看板で自宅に随分近寄ったと悟った私は、
助手席の窓から外を眺めたまま声を発した。
「ねぇ、大輔」
「なに?」
「江藤さんと付き合うの?」
無言の間、ふと彼女の顔が頭をよぎった。
私に向かって何にも知らないくせにと啖呵を切っていた。
「あの子、大輔の秘密を知ってるみたいだったけど、秘密を話しても良いくらい大切に思ってるの?」
大輔はしばらく何も言わなかった。