SCHUTZENGEL ~守護天使~
 酔い覚ましに誰もいない道を一人歩く。

 夏にさしかかろうとしているこの時期の深夜はまだ肌寒さを残していた。

 腕時計を見ると二時半を少し回ったところだ。

 彼女にもう一度会えるかな?

 なんて思いながら、ややふらつき気味の足を進めた。

 目の前の暗い街灯は時折、小さな音を立ててついたり消えたりを繰り返している。

「ん?」

 街灯の下にある物体を目が捉えた。

「猫──じゃない?」

 口からついて出た言葉は、そんなものだった。

 今思えば、かなり間抜けな言い方だったろう。

 よく見れば明らかにそれは猫ではなかった。

 大きく裂けた口、その口からチロチロと二股に別れた舌と、猫とは思えないほどの長い耳に黒い体はヒョコヒョコと不自然に動いている。
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