SCHUTZENGEL ~守護天使~
「あなた、暗黒の王になりたいの?」

 あの、おぞましい生き物の命を奪った槍にもたれかっているのは、まさしくあのバーにいた女性だ。

 薄暗い街灯から少し離れているが確かにそうだ。

「君は……」

「迷いがあると言ったでしょう? 今までの人生を棒に振る気!? 違うわね、もう無くしたわ」

 厳しい眼差しが男を射抜くように見つめていた。

「人生を棒に振る? 一体、何のことだよ。もっと解るように説明してくれないか? 俺が何をしたって──」

「忠告はした。聞かなかったのはおまえだ。今日の満月はいつもと違う。『暗黒の王』が死んで百年、満ち足りた月だ。負のエネルギーに満ちた今日、この時間に偶然、負の世界と波長が合った者が『暗黒の王』に選ばれる」

「何を言ってるんだ」

 この女は何を言っている。俺をからかっているのか?
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