暗がりの夜だから


月明かりに照らされた美しい顔は、どこか悲しくて―…

近づきたいと素直に感じた俺は、ある家の屋根の上にいる彼女のもとへ歩みを進めた。


はしごを上りはじめると、人の気配を感じ怯える彼女のか細い声が聞こえた。

だが構わず俺は、はしごを上った。

ただ、彼女のもとへ行きたかった。

あまりにも美しくて、なんだか暗がりの空に消えてしまいそうだったから。

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