恋のはじめ



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屯所に戻ると、まるで咲希の帰りを待ち構えていたかのように、中庭に藤堂がいた。



草木を下から眺めたり、突然しゃがみこんで土をいじったりと、不審者にも似た行動を繰り返していた。




そして咲希の姿を確認するとすぐに駆け寄った。




「さ、咲希!!巡察おつかれ!」





「え・・・あ、ありがとうございます」





あやふやなテンションに、引き気味にお礼を言う咲希なのだが、藤堂は構わず突っ走った。





「さっきはごめん!!俺、咲希の気持ちよく考えてなかった!!」





「え・・・・」





「咲希だって大変なんだよな!!大丈夫だから!俺、秘密にしておくから!!」




何だか嫌な予感がする。




本当は最初に名前を呼ばれた時から感づいていた。




「咲希がおん」


「ああぁぁぁぁあ!!!!」






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