恋のはじめ



複雑な表情で藤堂を見つめる。




一瞬、ドキッとしてしまい、右足の動きで小石のジャリ・・という音が鳴った。




藤堂は仮にも新選組幹部。



こんな重大なことを黙っておいてもいいのだろうか。




とはいえ、既に斎藤と沖田、そして山崎にまでばれている始末。




今更という心配事だ。





「確かにヤバイけど、何かほっとけなくてさ。行くとこもなさそうだし。何かあったら俺に頼っていいから!何も心配すんな」




同時に藤堂の左手が、咲希の頭の上に乗った。



それに一瞬ビクっとして、肩を強張らせる。




ポンポンとまるで幼い子を慰めるような、そんな感じだった。




背は高い方ではない藤堂だが、咲希より断然大きな手。




それは“男”の手だった。




と、その時。






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