恋のはじめ
死ぬ!!!
そう心の中で叫び、目を閉じた。
暗闇の中、浪士の叫ぶ声と、刀を振るう音が交差する。
そして、低く落ち着いた声が耳に届いた。
「こんなところで死ぬために新選組に入ったわけじゃなはずだ」
聞き覚えのある声に、ゆっくりと目を開けると、そこには倒れた浪士と。
「・・・さい・・・とうさ・・・・」
咲希は涙目で眼前に立つ斎藤を見た。
どうやら四国屋へ行っていた土方隊が到着したようだ。
咲希の前にもう敵はいない。
安心したのか、急激に肩の痛みが押し寄せてきた。
「いっ・・・」
ピクリと動かし、反対の手で傷口を押さえた。
滲み出る血を見た斎藤は、小さなため息を吐き、すぐに助けを呼んだ。
「おい!こいつを外へ運べ。怪我人だ」