ワケがありまして、幕末にございます。
「沖田さん、ちゃんと俺を見てください」
「…愁、くん」
「大丈夫です。
ホラ、分かるでしょう?
温かい、体温」
人は人と触れると落ち着くっていうから。
引っ掻き傷の沢山ある震えた手を握って、抱える様に近くに寄せる。
数分たった頃、やっとそれが治まり沖田さんに温度が戻った。
「温かい…」
だいぶ落ち着いたみたいだ。
じゃあそろそろ行こうかな。
「沖田さん、辛かったら泣いて下さい。
いっぱい、いっぱい」
「ふふ…大丈夫ですよ。
それに愁くんの手、私より少し冷たい」
「…えへ」
ニヒ、笑ってそう言えばニコ、と儚い笑顔が返って来た。
…うん、流石沖田さんだ。
なんて強い人。
スッと目を閉じて沖田さんの部屋を出た。
あの日以来、目は長い時間開けられる様になったが、アタシは人の表情を見る以外には目を開けない。
痛くなるのは変わらないし光が眩しい。
暗闇に慣れてしまった。
というより暗くないと落ち着かない。
もしかしたら心の奥のまた奥にある、人の死への罪悪感かもしれない。
明るいトコロを生きていけない罰。
そして現実からの逃亡。
つくづく臆病者だ、アタシは。
でもこれから自分がどうするかが大事だと思うから。
そう、これから。