甘く、甘い、二人の時間
康介は、私を助手席に乗せるとそっとドアを閉め、自分も運転席に乗り込んだ。
「……菫、もしかしてまだ仕事中?それなら会社まで送るけど。」
優しい口調で、優しい表情で、私を気づかう。
その優しさはあの頃のままなのに。
ただハンドルに腕を乗せているだけのその仕草が、やけに男らしさを漂わせていて。
あの頃の康介しか知らない私をドキドキさせて、焦らせる。
「…この資料、届けに行くの。」
なるべく目を合わせない様に、俯いたまま呟く。
「どの辺り?住所分かる?」
聞かれても、答えるわけにはいかない。
きっと送ってくれるつもりだから。
「康介。ありがと、もう大丈夫だから。涙も止まったし、地下鉄で行くから気にしないで。」
捲し立てる様にそう言って、ドアに手をかけた。
だけど
「――無理。…あの時みたいに、泣いてる菫の手を離すなんて、もう二度としたくない。」
康介は私を引き寄せ、耳元で囁いた。