甘く、甘い、二人の時間


資料を届け終えて外に出ると、さっき降ろして貰った場所にまだ康介の車が停まっていた。



どうしよう。

家まで送るって言われたけど。

さすがにそれはマズイと思う。



戸惑いながらも近づいて運転席側の窓をノックする。

すると康介は不思議そうな顔で窓を開けた。



「どうした?家まで送るから乗れよ?」



そう言われても、困る。


「…ありがとう、でもここで大丈夫。そんなに甘えるわけにいかないから。」


「それって、迷惑って事?」


「え!?違うけど!」




迷惑…ではない。

ただ、相手が康介だから、拓海に後ろめたい気分になるんだ。


大好きだった元彼だし、それに、まだ私の事が好きだって言うから――。




戸惑う私を見て、康介は運転席のドアを開けた。

そして私を助手席まで誘導する。



「とりあえず今は、俺の気持ちとか気にしないでいい。送り狼になるつもりもないから大丈夫。ただ、弱ってる菫を一人で帰すのが嫌なんだ。」


「でも、やっぱり私困るよ。」


「じゃあ、電車で送ろうか?それなら二人きりにはならないし。あ、アパート知られたくないなら、手前まで送ってから帰るから大丈夫。そうすれば、困らないだろ?」



……う。


言い方は昔のまま優しいのに、私に隙を与えない様に捲し立てて話すから、返す言葉が見つからない。




「…ごめん、素直に車で送って貰います。」




確かに、康介が無理やり何かするなんて事ないか……



普段の私ならもっとはっきり断っていたかもしれないけど、ナーバスになっていたし……諦めとかもあって、送って貰う事にした。



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