亡國の孤城 『心の色』(外伝)
「……………あ、そうだ。………これからはジスカに貰いな。あいつは何かと摘める物を持ってるからな。ただ、あいつは食い意地が張ってやがるからなかなかくれないぜ?………脅して奪い取れ。恐喝でしかあいつは動かない」
「………………恐喝…?」
「……よこせや小僧、と凄めば一発さ。それでも駄目なら噛み付いてやれ」
教育としては最悪な、何かいけない事を少女に伝授するバレン。
イブはしばらく考え込んだ後、にっこりと笑って頷いた。
「分かった!………恐喝してみる!」
「うん、良い子だ。分かったら訓練に戻りな」
もう一度イブの頭を撫で、その場で立ち上がって踵を返した。
立ち去るバレンの背中を、ご機嫌なイブの声が押した。
「でも、時々お菓子作ってね―!」
「………………時々ねぇ…」
少女の視線を背中に感じながら、いつの間にか火が点いた煙管を咥えた。
暗い廊下を真直ぐ進み、彼女の姿も、自分の姿も見えない闇の中を………バレンは見据えた。
視界にあるのは漆黒と、小さな煙管の赤い火。
フラフラとしているが、確かな足取りで…長い螺旋階段をゆっくりと上って行く。
何も見えない。
何も見えないけれど。
瞬きをする度、瞼の裏に………色褪せ過ぎてすっかり見えなくなってしまった、『昔』が………顔を出す。