亡國の孤城 『心の色』(外伝)
二人を取り囲む空気が、赤みを帯びた蜃気楼の様にグラリと歪み始めた。


………ジワジワと、熱気が渦巻いていく。






―――…その途端、クライブの足元から、黒い煙がポツポツと上がり始めた。

天井に昇る細い煙は数を増し………クライブを軸に円を描く様に、床に焼け跡が浮かんでいく。



……黒ずんだ床からとうとう、小さな炎が生まれた。


生まれたばかりの小さな火はあっという間に大きくなり、意思を持っているかの様に二人を遠巻きに囲み、床から高い天井へグルグルと旋回した。




暗闇が永住する広大な部屋全体に、真っ赤な炎の風が吹き渡る。


長い間、光を浴びていなかった刀剣や、埃を被った質の良い絨毯、くすんだシャンデリアに、亀裂だらけの真っ白な壁。


………最奥でその空間を見詰める、肖像画の女。















「………………お前とこうやって剣を交えたのは………何年ぶりだろうな…?…………………下っ端時代に一回だけあったが…あれは訓練だった。……………本気で殺り合うのは初めてだなぁ………………ハハハ…」

「…………………最初で……最後だ…」

「…違いねぇ」







瞬間、押し合っていた互いの剣が擦れ合い、色鮮やかな火花が舞った。

同時に、二つの影は大きく跳躍し、距離を取って離れた。




部屋の両端に移った直後、間を置かずにバレンが間合いを詰めてきた。



並の動態視力では追いつけない速さで、バレンはあっという間にクライブの目前にまで寄り、二本の剣を右、左と交互に切り込んできた。
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