赤い下着の主

 親指で涙をすくい、そのまま鎖骨まで滑らせて。

「先生、ごめん」

「何が?」

「俺がもっと大人だったら、泣かせるようなこと言ったりしないのに」

 自分は別の女と遊んでたくせに、自分ばっかり傷ついてるような気になって。

 先生はデートじゃなかったのに、濡れ衣を着せるような言い方して。

 そんな権利もないのに。

 本当に、情けない。

 ダサいな俺。

「十分大人びてるじゃない、顔以外は」

 俺はもっと先生に近付きたいんだ。

 だから、せめて……

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