赤い下着の主

 しかし、世の中の主婦と呼ばれる女性たちの多くが同じ不満を感じていると知っていたので、その不満に関しては強く訴えることはしなかった。

 何せ彼はフットワークこそ軽くないが優しい男であったし、

「ありがとう」

 などと労いの言葉をかけてくれていたからだ。

 不満はあるけど、テレビで見るような悪いケースではないと、無理に安心していたところはある。

 共に生活をしているといっても美奈実は彼の妻ではないし、恋人であるというスタンスは崩したくなかった。

 しかしその頃には、彼は美奈実を恋人として扱うことさえもしなくなってしまっていた。

 休日二人でどこかに出掛けることを面倒臭がるようになり、部屋にいても美奈実に構わずテレビにかじりつく生活。

 そして、美奈実に別れを決意させた決定的な原因は、いわゆる、セックスレスだった。

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