Hamal -夜明け前のゆくえ-
僕を見下ろす強面の男性――推定25歳前後――は無表情で「おお」と言った。かと思えば、
「フードなんか被ってっから前見えねえんだよ」
と叱るように眉を顰めた。
「……すいません」
謝りながらも、取られないようにと口元近くのフードを掴んでしまう。
「つーかなんでそんな目深に被ってんだ? 周り見えねーだろ」
「……」
自分でもどうして被ってしまうのか、明確な答えは持っていない。
額の傷を隠したいだけなら他にいくらでも方法はある。
それでもフードを被り続ける理由があるとすれば、周りに見えないから……かな。
僕はまだ世界にちゃんと溶け込めていない気がして、恥ずかしいのかもしれない。
「あれか。おしゃれか。今どきの若者のセンスってのは難解だな」
「やめなよリュウ……きっと帽子が苦手なんだよ」
え、それは違う……。
もうひとり女の子がいたとは気付かなかった。
クロと同年代に見えるが、こんなに違うものなんだな。存在感というか、生命力というか。そういうものが希薄に映る。
一度目に入れば、独特な印象を与えるのは間違いないけれど。
こんな廃れた場所で、クロ以外の子を見る日が来るなんて。
……まあこの時間帯なら、通り道にしてもおかしくはないか。