Hamal -夜明け前のゆくえ-
「坊主、ちゃんと前見て歩けよ」
ぽん、と肩を叩いてきた男性の気さくさに驚きながらも、軽く頭を下げた。
強面だから怖い人かと思ったのに、やっぱり今日は運がいいのかな。
「ああっ! ちょっと待て坊主っ!」
突き抜けるような大声に急いで振り返ると、男性は僕を指差していた。
「ここで俺らに会ったことは絶っっ対、誰にも言うんじゃねえぞ! いいか? 絶対だ!」
「……、ハイ」
頷きながら硬い返事をすれば、
「マジで言うなよ」
と念を押され、男性と女の子は去って行った。
援交だったりしたのかな。そんな風にも見えなかったけど……なにがあるかわからない内は、誰にも言わないでおこう。
この街では危機感を持たなければ。
そう僕に強く思わせた一因でもあるクロとは長らく会っていなかった。
過去形になったのは、祠稀の家でもあるビルの一室で出くわしたからだった。
「あっ、パーカーちゃんだ~っ。ご無沙汰してまっす! 会いたくなかっただろうけど、それあたしの台詞ぅ!っと言いたい感じのクロでっす!」
祠稀にファイルのようなものを渡していたクロが僕に気付き、敬礼してくる。
「……久しぶり」
「苦笑、苦笑。ひどいなぁ。会いたくないってところは否定してくれてもよかったとクロは思うのです」