Hamal -夜明け前のゆくえ-
「うんうん。歓迎、歓迎。今のパーカーちゃんはしぃ君とセットでこそ価値がある。これから楽しみだねえ、しぃ君っ。久しぶりに仲間が増えて嬉しいもんねえ?」
「言ってる意味がわかんねーけど、てめぇの場合、仲間ってのは金づるのことだろ」
「あー。傷付いた。しぃ君はオブラートって言葉を覚えたほうがいいとクロは思うのです」
「オブラートに包んだ言葉だけもらえたら嬉しいのかよ。ちょろいな」
鼻で嘲笑した祠稀に少し動揺したのは、僕だけじゃなかったらしい。
祠稀に負けず劣らず奔放なクロが、二の句を継げないなんて初めて見た。
「――チッ」
えっ……。
背けていた顔をさっと前に戻したクロは、舌打ちしたばかりとは思えないほど満面の笑みをたたえていた。
「クロ'sデリバリーのご利用ありがとうございましたー! 今後もどうぞご贔屓にーっ」
くるりと反転したクロは鼻歌を交えながら帰っていった。
さっきは目が笑ってなかったから、余計に不気味……。
「苦手だなあ」
閉まったドアにこぼせば、
「俺は好きじゃねえ」
と祠稀が返すから独白になり損ねた。
「舌打ちしてたよね……。怒ったのかな」
「気にすんな。クロは自分より弱い奴をいたぶるのが好きなんだよ。自分がずっとそうされてきたからな」