Hamal -夜明け前のゆくえ-
「……、そうなの?」
「俺が調べた限りじゃ。想像つかねえだろ、この街で生きる術を自力で確立させたクロが、街から出たら同級の女にいたぶられる側とか」
「つかない……」
「なんで外でも同じように振る舞えねーのか不思議だわ。……まあ色々あんだろーけど」
出窓の外を眺める祠稀の声はけっして楽しそうではなかった。
クロのことは、助けてあげないのかな。
ちらっとそう思ったけれど、情報屋のクロと威光の生き残りかもしれない祠稀では難しいのかもしれない。
仲が悪いようにもいいようにも見えないふたりは、互いが利用し合うだけの関係であることが端的に表れている。
とりたてて呑み込もうとする話題でもないか。
だけど――…。
ちらりと見遣ったのは、クロから祠稀に受け渡されたファイル。
その存在感はいやに大きく、歯痒さを煽るよう。
……情報収集だとして、それはなんのために必要なものなんだろう。
そこに、僕は、居なくていい?
祠稀と一緒にいられれば、見える全ての輪郭さえぼやけているまま。
生齧りの状態のままで、僕はこれから先も祠稀のそばに、いられるのかな。