Hamal -夜明け前のゆくえ-
気付いたときにはもう、知る術がなくなった。
気付いたときにはもう、ひとりだった?
「祠稀は……威光の、たったひとりの生き残りなの?」
ピアスをいじっていた祠稀の手が、すとん、と落ちた。
トクン、トクン。僕の鼓動はだんだんと速まっていく。
瞬きひとつのあとに強められた祠稀の視線が、心胆の奥を衝いた、その時。
「……電話」
テーブルに置いていた携帯が大きく振動し、それを拾い上げた祠稀は席を立つ。
「わりぃけど用事できそうだわ。お前、適当に帰ってろ」
祠稀はそう告げたあとすぐ電話に出て、足早に店をあとにしてしまった。取り残された僕はがっくりと項垂れる。
なんてタイミングの悪さ。
それとも天の啓示ってやつだろうか。神様とか信じてないんだけどさ。
1番知りたかった答えをもらう瞬間に邪魔が入るって、やる気なくす……。
「はあ、」
仕方ないか。話を逸らされたわけじゃないんだ。またの機会にすればいい。
「すいませんレジお願いします」
店主とひとりの従業員しかいない厨房に声をかけると、20代半ばの店員がやってきた。
「170円のお返しですねー」
……え? まだお金出してないよ?
財布を準備していた僕は、レジを開けた店員に顔を上げる。ひらりと視界に千円札が現れる。
「アイツが置いてったよ」
「え? あ、でも、会計は別々で……」
「いーからいーから。俺がアイツにどやされっから。てかもうレジ打っちゃったし」
そう言われては仕方ないので釣り銭を受け取った。