Hamal -夜明け前のゆくえ-
どうして……。
どうしてなの。
必死に頼んだのに。祠稀が苦しい思いをしてるのに。面倒だからってだけで、突き放された?
鈴さんにとって祠稀は、あっさり見切れる存在だったの?
じゃあ、あの親しそうに祠稀と話していた時間は。
見知らぬ僕の手当てをして、親切にしてくれたあの時間は、なんだったの。
気まぐれ? 暇潰し? 所詮、相手はただの子供だと思ってた?
……そうだよね。そんなものだった。
忘れていたわけじゃないのに、また夢見ていただけなんだ。
僕が出会った人の中にはひと握りでも、頼りたいと思える人がいるのだと。
いつだって優しくしてもらえるのだと思っていた。
そんなのは僕の弱さが抱かせた、願いにも近い妄想で。
祠稀が言う、夢物語だ。
突き放すとか、見切るとか。そんな感覚を誰もが初めから持ち合わせているわけじゃないんだ。
きっと、誰かが傷付いたとき。傷付けたとわかったとき、初めて知る感覚なんだ。
できることなら知らずにいたいから、僕は今こんなにも悲しくて、悔しいのかもしれない。
「~っ、」
ドンッ!と閉められた戸口を力いっぱい叩いた。それはやり場のない感情を余計に掻き立てるだけだった。
泣くな。
世界はいつだって残酷で、救われることよりも切り捨てられることのほうが多くて、他人より自分を大事にするようにできていたじゃないか。