空しか、見えない
 冷たい水気を含んだ潮風が、佐千子の頬にあたる。懐かしい潮の香り。穏やかな海そのものを伝えてくるような、岩井の潮の香りだ。
 それぞれの民宿の脇から海辺に向かって小道が続いている。季節外れの海だが、いまにもそんな道々から、子どもたちが歓声をあげて飛び出してきそうに感じる。
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