空しか、見えない
「どうしてあんなに急いでいたんだろうね」

 佐千子はそう言って、一度言葉を呑み込んだ。

「あのね、もっともらしい話になっちゃうかもしれないけど、私が子どもだった頃好きだった本には、人はいつか星になっていくんだって書いてあったの。みんなゆっくり寄り道しながら進んでいくんだけど、時々、急ぎ足で星へ向かっていく子がいる。きれいな絵だったの。暗い夜空の中を、煌めく星空へ向かって階段が伸びていて、一歩一歩あがってく。急ぐ子は、ちょっと珍しい靴をはいてるの。やけに大きかったり、とがっていたり、左右が違ったり。母が死んじゃったとき、久しぶりにその本を出してきて、妹と一緒に読んだ。こんなきれいなところへ行ったんだったらいいね、とかって案外落ち着いて話せたよ」
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