空しか、見えない

 佐千子の1LDKの部屋は、ぎゅうぎゅう詰めになった。
 環、千夏、フーちゃん、そしてのぞむ。岩井海岸から都内まで電車で戻った5人は、結局別れがたく、佐千子の部屋へと流れ込んだ。
 急な話で、佐千子の部屋は、取り繕いようもなかった。寝室のドアは閉めきったままにしたが、小さな対面式になったキッチンの手前に、ふたりがけ用の小さなダイニングテーブルがある。そうは言っても、ほとんど料理もしないので、カウンターの上には、いつも使うマグカップがひとつ、母の写真、そしてハッチの仲間たちの写真が飾ってある。
 その横には、電話の子機と、携帯電話の充電用の台。のぞむが来るんだったら、男物のパンツの一枚でも見栄で干しておけばよかったと佐千子は思う。
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